長期優良住宅とは、長期にわたり住宅を良好な状態で長持ちさせるために必要な基準を設けておき、その基準をクリアしたもので、平成21年(2009年)6月に施行された「長期優良住宅の普及の促進に関する法律」に基づいています。
長期にわたりというのは、新築時の建物プランにおいて長期的に良い状態を保つことができるものであり、且つ、新築後の維持管理・メンテナンスのしやすさも考慮されたものであることです。新築された時点だけではなく、将来のメンテナンスのしやすさまで評価する点が特徴的です。
具体的には、構造躯体の劣化対策、耐震性、維持管理・更新の容易性、可変性、バリアフリー性、省エネルギー性で一定の性能を求められており、また居住環境や住戸面積も条件となっております。
長期優良住宅の認定基準
長期優良住宅の認定を受けるための基準としては、劣化対策、耐震性、維持管理・更新の容易性、可変性、バリアフリー性、省エネルギー性、居住環境、住戸面積、維持保全計画の項目があります。それぞれの項目は以下の通りです。
劣化対策
劣化対策等級3相当に加えて、
・床下及び小屋裏の点検口を設置
・床下空間に330mm以上の有効高さを確保
劣化対策は、「数世代にわたり住宅の構造躯体が使用できること」となっており、構造躯体が100年程度の期間、使用できることとされています。 具体的には、鉄筋コンクリート造であれば、セメントに対する水の比率を抑えるか、コンクリートのかぶり厚を厚くすることとされております。木造であれば、床下や小屋裏の点検口を設置することと床下の高さを点検するのに十分な高さとすることとされております。点検口を設置するのは本来であれば当然のことでもあり、それほど難しい基準ではありません。
耐震性
次の1~3のいずれかの措置を講じること
1.耐震等級2以上とする チェック項目:性能表示壁量、壁の配置、床倍率、接合部、横架材、基礎
2.大規模地震時の地上部分の各階の安全限界変形の高さに対する割合をそれぞれ1/40以下とする(層間変形角を確認)
3.免震建築物とする
耐震性は、極めて稀に発生する大規模な地震があっても、建物の損傷を抑えることで継続利用のために必要な改修工事を容易にすることを考慮したものとされています。
例えば、建築基準法で想定する1.25倍の地震でも倒壊しないことです。これは、性能評価の耐震等級2に相当します。
維持管理・更新の容易性
・構造躯体等に影響を与えることなく、配管の維持管理を行うことができること・更新時の工事が軽減される措置が講じられていること
内装や設備について、維持管理のしやすさを考慮したプランとすることとされています。構造躯体は長持ちするものの、内装や設備の耐久性はそれほどではありません。よって、構造躯体だけが長持ちしていても、長期にわたり良好な状態で使用することができません。 そこで、内装や設備については、清掃や点検、補修、取替えをできるだけ容易に行えるようにすることが求められています。
可変性(マンションのみ)
・居住者のライフスタイルの変化等に応じて間取りの変更が可能な措置が講じられていること。可変性とは、間取り変更が容易にできるかどうかです。その時代のライフスタイルに合わせて容易に間取り変更できるよう考慮することとされております。
バリアフリー性(マンションのみ)
・将来のバリアフリー改修に対応できるよう共用廊下等に必要なスペースが確保されていること。高齢者等が使用しやすいように、廊下の巾や階段の巾・勾配などを考慮することとされております。廊下などの幅とバリアフリー性の関係は車いすの使用をイメージしてください。
省エネルギー性
省エネ法に規定する省エネルギー基準(次世代省エネルギー基準)に適合すること。=省エネルギー対策等級4 ※1又は2の規定を満たす
1.性能規定(Q値、μ値、結露対策)
2.仕様規定(U値)
断熱性能などの省エネルギー性が確保されていることとされており、性能評価の省エネルギー対策等級4に相当します。
居住環境
所管行政庁が審査 ※所管行政庁毎に基準が異なる良好な景観の形成やその地域の居住環境の維持や向上に配慮されたものであることとされており、その建物単体だけではなく地域との関連も考慮しなければなりません。
住戸面積
・75m2以上(2人世帯の一般型誘導居住面積水準)良好な居住水準のために必要な規模を有することとされております。一戸建て住宅であれば75㎡以上とされ、マンションであれば55㎡以上とされております(但し地域の実情に応じて引上げ・引下げあり)。
維持保全計画
維持保全計画に記載すべき項目については、1.構造耐力上主要な部分
2.水の浸入を防止する部分
3.給水・排水の設備
上記について、点検の時期・内容を定めること。
〇少なくとも10年ごとに点検を実施すること。
〇地震時及び台風時に臨時点検を実施すること。
将来に、構造耐力上の主要な部分や雨水の侵入を防止する部分、給排水設備について定期的な点検の時期や内容(補修の計画)を策定しておかなければなりません。また、少なくとも10年ごとに点検を行う必要もあります。
住宅履歴情報の整備
必要図書・長期優良住宅認定申請書および添付図書
・意匠関係図書(平面図、立面図、矩形図 等)
・構造関係図書(各種伏図、壁量計算書、N値計算書、接合金物リスト 等)
・仕様関係図書・設備関係図書・設備機器関係図書 等
長期優良住宅に認定された住宅はその建築及び維持保全の状況に関する記録を作成し、これを保存しなければなりません。※電子データ等による作成・保存も可
長期優良住宅は以上の条件を満たして認定されます。新築時に長期優良住宅の認定を受けている住宅は、その認定証又は認定長期優良住宅建築証明書の確認により無条件に50ポイントが付与されます。